News

LCA流「おもしろい!」を生む、動画授業設計の3つのポイント

 新型コロナウイルスは、日本の教育界にどんな変化をもたらしたのか?

 世界的な非常事態宣言から早、4ヶ月。社会は自粛ムードから一転、流れの中で行動変容を余儀なくされている。
 その変化のスピードは有史以来はじめてのものであり、歴史を賭して人類が組み上げてきたスタイルを尽く否定した。

 ここLCA国際小学校も、その影響を受けた一校だ。

ソーシャルディスタンスを取りながら授業をするあるクラスの様子

 この記事では皆様に、双方向ライブ授業と、150本のこだわりの動画教材で学びを生んだ、LCA国際小学校の矜恃をお伝えする。
 同校が如何にオンライン学習を創り、提供してきたかを、三名の先生方へのインタビューをもとに綴る。

「私たちの仕事は、知を与えることではなく、知へ導くこと」

 インタビュー冒頭でこう切り出したのは、2年生の担任を務めるマーティンス先生。

“私は普段から、教科書中心の指導に偏らず、一つのコンセプトを習得するために、なるべく多くの視点から子どもたちに考えさせる活動を重視しています。”

マーティンス先生はLCA国際小学校で勤務4年目、祖国ブラジルでも多様な指導経験を持つ。先生方の中でも中核を担うマーティンス先生が、この大きなうねりの中でチャレンジしたこと。
 それは、「知へ導く」日頃の子どもたちへの寄り添い方を、オンラインでも一般化することだった。
 LCA国際小学校の、独自のイマージョン教育は、多様な視点で児童の豊かな心を育むものだ。
 先生方は日頃から、徹底的に児童に向き合い、彼らの好奇心に耳を澄ます。
児童はどんな風に感じ、どうしたいと考えるのか。
そっと寄り添い、個性を最大限尊重する。

一人ひとりのつぶさな様子を見守るマーティンス先生

 マーティンス先生は、LCA国際小学校の強みを、こう語る。

“多様性を受け入れる素地が圧倒的に身につくことです。外に出た時に「人と違う事」に出会っても、LCA国際小学校の児童は、力強く、自分らしく向き合えます。”

 多様なバックグラウンドを持つ先生方との対話の中で、児童は自分のあり方を知り、他者のあり方を知る。これが ”LCA国際小学校らしさ” だ。
 ところが、新型コロナがもたらした登校自粛期間は、先生と児童との、心を通わせる温かい対話を、制限するものであった。

オンライン化の潮流と、葛藤

“オンラインへのチャレンジは、生徒・保護者はもちろん、私たち教職員も新しい体験でした。児童たちもICTツールを用いた学習は初めてであり、学習設計には細心の注意を払いました。”

と、語るのは荒井顕一先生。

 いつもの授業スタイルが、オンラインでは実現しない。

“手段としてのオンラインは、果たしてLCA国際小学校らしさを表現できるのか。”
“LCAの学びを継続させたい。しかし、量を増やせばどうしても一つ一つの教育コンテンツの、クオリティが下がってしまうのではないか。”

 議論に議論を重ねた結果、LCA国際小学校では、コミュニケーションを目的としたオンライン双方向授業と、教科指導を主眼とした動画での学習をハイブリッドで提供した。
 体調の確認、簡単なカウンセリングや短い授業をオンライン双方向授業で、主要教科の単元学習は、動画教材で行った。

オンライン学習プラットフォーム ”Google Classroom” で配信されている教材の写真


本当にその授業は、子どもたちをアクティブにさせるものか?

 オンラインでの学習体系の組み上げ方については、手探りで解を出さなければならなかったのだ。先生方は、徹底的に議論を重ねた。

国際人を育てる

考え、感じる力を養う

個性を活かす

 これは同校の教育理念だ。先生方は、いつもそうやって教育プログラムを組み上げてきた。

”オンラインであっても、必ず教育理念を貫きたい。”

 本当にその授業は、児童をインスパイアし、動かすものか。先生たちはそう自問し、1つのコンテンツを何回も練り直した。
 朝に打ち合わせが始まり、一つの動画を作り終えるのが深夜になることもあった。

「数ではなく、本当に児童をアクティブに動かすことに拘ろう!」と教員陣は一丸となり、これをLCA流オンライン学習のコアバリューとした。

オンラインでも、惹きこまれる楽しい教材を!

“子どもたちには早く直接会いたかったけれど、遠隔でコミュニケーションが取れるだけでもありがたいことでした。だからこそ、動画コンテンツも、絶対楽しんで欲しい!今私たちにできるオンライン授業に、徹底的に拘ろうと思えました。  短い時間で効果的に理解するには、どんな問いや活動が良いか。楽しいと感じるコンテンツを、チームでいかに作るか。
 2ヶ月の自粛期間は、ワクワクしながら、1日の中の食事・睡眠の時間以外は、ずっとそんなことを考えていました。」

 弾けるような明るさでこう語るのは、3年生担当の藤山結以先生だ。暗いニュースが飛び交う2020年だが、藤山先生の辞書に、「暗い」という言葉はない。
 藤山先生は、教室での児童の「表現する活動」に特に深いこだわりを持って指導してきた。
 教材個々の「おもしろみ」をいかに教員が増幅させ、楽しい学びとして児童に届けるか、日夜探究しているという。

ここで、藤山先生がプロデュースした、動画コンテンツを一つ紹介する。

動画例①「こえに だして よもう(詩『あさの おひさま』)」小坂先生

以下は、藤山先生からお聞きした、作成談だ。

——————————————————————————————————–

この単元は、1年生が初めて学ぶ詩です。
「おひさまの様子を想像し、それを活かしながら音読する」
「詩との出会いを大切にする」
「言葉の響きやリズムのよさを味わいながら音読する」
と、目標を設定し、次のようなポイントで作成しました。

①詩との出会い

・小坂先生が実際に自身で撮影された、日の出の写真、波の音を利用
 →日の出がゆっくりと昇ってくる、早朝の海の静けさを想起

・しっとりと静かに説明
 →日の出がゆっくりと昇ってくる、早朝の海の静けさを想起

実際のビデオ教材の見え方


②場面の様子や登場人物の行動を想像する。

・擬態語「のっこり」はゆっくりと、擬音語「ざぶんと」は少し勢いをつけて、大きく読む
 あさのおひさまの様子を予想させる

・小坂先生自身の顔をおひさまに見立て、動作をつけて説明する
 →擬態語「のっこり」、擬音語「ざぶんと」の概念を理解する

③言葉の響きやリズムのよさを味わう。

・音読時、本文にマーカーでリードが引かれる工夫をした
 →読む場所や読み始めるタイミングをわかりやすくする

・擬態語や擬音語のシーンでは、小坂先生の動作も加えて、読み上げる
 →擬態語や擬音語を体現し、言葉の響きや詩の世界をより味わえるようにする

その後の工夫

 この動画では、スムーズに音読することは目標とはしていなかった。
 だが回を重ねるごとにリズムよく読めるようになってほしい、言葉のリズムや響きをもっと味わってほしいという願いがある。
 そのため、続編の動画に、小坂先生との交互読みを、手拍子に合わせてリズムよく音読することを入れた。

———————————————————————————————-

 以上のように、藤山先生は、この動画コンテンツのプロデュースまでのプロセスを語ってくれた。

また、藤山先生自身ももちろん授業をなさっている。

動画例② 3年国語「漢字の音と訓」「夏のくらし」藤山先生

 みなさま、お気づきだろうか。文科省は、世の先生方に「学習指導要領」を発布しており、教材の指導書が流通している。
 しかし、当然だが、オンライン学習の工夫は、指導書にも載っていなければ、世の中の誰かが教えてくれるものではない。児童の動きを予想し、画面の前で行動してくれるようにゼロから作り上げた工夫だ。
 動画を見ていただければお分かりになるが、当然、編集にかなりの時間がかかっている。1本たり、2時間や3時間では終えることはできない。
その動画コンテンツが合計で150に及んだのだ。

 プレーヤーとして自身のクラスで授業、動画作成を担当しながらのプロデューサー役まで担当した藤山先生。その業務量には舌を巻くばかりだ。

オンライン学習を経験して起きた変化

 教務主任として、先生方の全ての教育活動に責任を持つ荒井先生に聞いた。
 荒井先生も算数を主として先生方の動画プロデュースを担当された。

“日頃、教員は授業している時間が長く、お互いの授業を見る時間が少ないと感じています。 ただ今回、全ての授業が動画でクラウドに残りましたので、お互いの授業を見て、良いアイディアを自分の授業に取り入れることができました。”

先生方は、お互いの授業を見合うだけでなく、プロデューサーを務める先生からのフィードバックを踏まえ、自身の指導観に活かす中で、「児童の活動をイメージする習慣」が身についたという。

“この習慣は、結果的に先生方の授業構成力・表現力を向上させたと考えています。”

と荒井先生は語る。

おもしろい!を誘発する3つのポイント

 3人の先生方へのインタビューから、今回の登校自粛期間の奮闘をお伝えしてきた。
 最後に、お一人お一人からのインタビューから見えてきた、おもしろい!を誘発する3つのポイントをまとめたい。

①社会と結びつけ、多方面からの視点を混ぜ込む

“自身のあり方、社会との関わり方の基礎を体得する教科・単元が日本の小学校教育の大きな特徴です。そこに、多様なバックグラウンドを持つ先生方からの情報共有と視点が加わり、日本の「社会に目を向けた教育」の精神に、更なる彩りを加えています。”

とマーティンス先生。

 LCA国際小学校の指導理念「国際人を育てる」の土台を担う教科と言えるかもしれない。
 ただ、その教科を教科書という枠で伝えていくだけではなく、先生方の生き方や信念と合わせ、興味関心を魅く工夫を凝らして伝えることが、物事をクリティカルに考えられるようになるために、教員が最も注力すべき点だと語る。

動画例③ Life Skills – Tomato and life cycle


②表現する体験に「楽しむ工夫」を散りばめる

 教材を「理解すること」「暗記すること」以上に、味わい楽しむことを届けること。
 読む、書く、聞く、話すは何のために行うのか。
 筆者はそれを、豊かに人生を送る上で、他者が残した作品を楽しむ、共感することが必須なスキルだからだと考える。
 ただそのスキルの習得自体が目的になってしまえば、おもしろいと思える授業からは遠ざかってしまうのではないだろうか。

 藤山先生のプロデュース理論からこのことを筆者は学んだ。

③チームで指導観を共有し、練り上げる

 教員は一人で教授活動を行うことが多いもの。だが今回の登校自粛期間を経て、オンラインを通じて学ぶコンテンツを創ることで、チームで教材を作成するパラダイムが生まれた。そこには、各々の指導観が現れ、まさにプロジェクトとなる。そこで出る意見は、子どもたちの学びに本気な教員だからこそのものとなる。 

 故に、賛否が別れるような場面もあるが、そういった討論を越えて、真に良い教材が生まれ、文化が生まれる。
 荒井先生からは、そのチームづくりの覚悟を教わった。

 三名の先生方からのインタビューで筆者は、オンライン学習を創るとは、この3点について、教育活動をアップデートすることであったと学んだ。
 同校でICT活用支援を行う筆者は、この先生方の仕事にこそ、真のICT活用を見た心地である。ここで経験したことは、必ず学校での対面授業がさらに良い方向に進化することに役立つと確信している。

 登校自粛が明け、2ヶ月の変則登校を経たLCA国際小学校の、今後のチャレンジから目が離せない。

登校自粛が明け、再開を喜ぶ荒井先生と児童たち

LCA国際小学校

株式会社エデューレエルシーエーが手掛ける、神奈川県相模原市緑区にある、株式会社立の小学校。独自のアクティブイマージョン教育により、一人ひとりの個性を大切にした授業で「国際感覚と日本人の心」を育んでいくことを目指す。
LCA国際学園の豊富な経験や実績から生まれたノウハウを活かした、英語教師研修、小学校向け業務委託、教育コンサルタント事業なども行い、他校の英語教育や学校運営もサポートしている。

https://lca.edure.co.jp/

コメントを残す

*

CAPTCHA